hittyのブログ

ちょっと調子の悪いオヤジのネット起業奮戦記

或る「事実」とその「解釈」の違い――新人くんとベテランドライバーのそれぞれの解釈と『真実』――

ご来訪いただき、有難うございます!


名探偵コナンで有名な台詞の1つに、
「真実はいつも1つ!」
というのがありますよね?。わたしは
「真実はいつも人の数だけ!」
だと思っています。実際に起こったコ
トを「事実」と言うとすると、それに
関わった人の思いの数だけ「真実」は
分化して存在すると思っている訳です。


或る一つの「事実」に対して、それに
関わった人の数だけ、「真実」は存在
する…。なんだか、わかったような、
わからないような話になりがちですよ
ね?


立場が変わると同じ現場でも全く違う
受け取り方をしてしまうコトがありま
す。なかなか例を挙げて説明するのは
難しいモノですが、ものすごくわかり
やすい例を経験したので、ご紹介しよ
うと思います。


物流の仕事の新人ドライバーを、仮に
M君とします。同じくベテランドライ
バーを仮にKさんと呼びますね。


或る日の夕方、Kさんが集荷をしてい
る時間に、M君が自分のクルマの残荷
を移しにこっちのクルマの荷台の所に
来ていました。「集荷」とはお客さん
の所に発送予定の荷物を取りに伺うコ
ト、「残荷を移す」とは、お客様が不
在で渡せなかった荷物を夜間も残るト
ラックに引き継ぐコトを指します。


わたしはトラックの横乗りをしていま
す。「横乗り」とは、本来、駐車違反
の赤切符を切られないように、クルマ
の助手席に乗っている仕事なんですけ
ど、わたしは駐車時間を短くするコト
も大切なコトだと考えるので、できる
範囲でドライバーを手伝うようにして
います。


その時、Kさんから、


「Mが残荷を持って来るから、受け取
って、荷台に入れておいてください」


と頼まれていたので、M君から荷物を
受け取っていました。M君が、その荷
物をわたしに渡しながら


「Kさんは鬼です。ヒドいんですよ!」


と泣き言を言い出しました。わたしは


「何があったの?どのくらいヒドいの
?」


と訊きました。するとM君は、


「まだ仕事を始めてわずかですし、地
図を見ながらしか配達出来ないのをK
さんは知ってるのに、毎回荷物の量を
10個ずつ増やして行くんです」


と言います。わたしは、


「へー、そう。今、1日にいくつ配達
できるようになったの?」


と訊きました。M君は、


「配達の初日が40個でスタートして、
今日は140個も配達したんです」


と泣きそうになりながら言っています。
それを聞いて、わたしは、


「ほう。それじゃ、あと少しで一人前
の個数を配れるようになるね」


と言いました。M君は、


「一人前の個数?」


と怪訝な顔をしました。


「何ですか?それ…」


と言うので、Kさんの持論を話してあ
げました。


「Kさんは、ドライバーは180~200
個の荷物をコンスタントに運べるよう
になって初めて一人前になる、って言
ってるよ。クルマをどこに止めて最短
で運ぶかは地域のコトもよく知る必要
があるし、どこに止めると迷惑をかけ
る可能性があるのか、気を配らなけれ
ば、200個近い荷物をコンスタントに
は運べないから、ってね」


M君は、無言でわたしをじっと見てい
ます。


「その180個~200個の荷物をいつで
も配達できる力が付かないと、他のド
ライバーがテンパった時に、助けてあ
げられる余力が出て来ないんだそうだ。
つまり、それだけ配達が出来るように
なると、自分の担当荷物をどうサバく
のかが解るようになるんだって。人の
状態を訊いてあげられるようになるポ
イントの数だって言ってるよ。そうな
って初めてその地域のチームのメンバ
ーにカウントされるようになるそうだ
よ」


そう説明して、わたしはさらに、


「Kさんが以前育てたドライバーは、
3か月かかったんだ。M君は2か月で
一人前にする計画なんじゃないかな?」


と言うと、「えっ?」と言うので、


「そのドライバーは、最初の頃、80個
でヒーヒー言ってた。それをKさんは
3か月で200個をコンスタントに運べ
るドライバーに育てたんだよ。俺が隣
に座って見てたから間違いない」


そう言うと、


「へー、そうなんですか…。でも、最
初から80個運べた人より、最初40個だ
った僕を1か月も短い期間で育てるの
は、ちょっと無理があると思うんです
けど…」


M君がそう言うので、わたしは、


「いや、Kさんもいろいろ考えてるみ
たいだよ。M君には自信をつけさせた
いから、少しずつ実績を出せるような
やり方で応援しているんだと思うよ」


と言いました。するとM君は、


「そんなコトないですよ。きっと、K
さんは僕のコトが嫌いなんですよ。だ
から僕にどんどん荷物をたくさん渡し
て来て、早くやめさせようとしてるん
だと思ってました」


と言うので、わたしは思いっきり否定
しました。


「何を言ってるの?全く逆だよ。Kさ
んの隣に居る俺が言うんだから間違い
ないよ!」


そう言うと、M君は鳩が豆鉄砲を喰ら
ったような顔をするので、わたしは続
けました。


「だって、M君に渡してる荷物を見る
と、本当にKさんは優しいなあ…と思
うよ。荷物の配達実績を増やすために
同じ家で荷物が複数あるモノを渡して
M君の自信と配達実数を増やそうとし
たり、番地はいろいろでも、或る道を
起点に考えると、その道のこっちと向
こうでクルマは同じ位置に置いたまま
でいくつか配達できてしまうような、
配達時間が短縮できる荷物を選んで渡
してるんだよ。道を起点にして番地を
憶えると、頭で、というよりカラダが
覚えるだろう?そういう配達しやすい
荷物をまとめるコトを『ブロックを固
める』とか言うんだけど、いつも固ま
った荷物を渡してもらえてるって、M
君は気が付かなかったかい?」


しばし絶句するM君…。そして、


「でも、今日の午前中に午前指定の荷
物がその時点で20個も残っていて、助
けを求めたら、『出来るコトを全部や
ってから泣きついて来るならわかるけ
ど、おまえはまだ何にもしてないじゃ
ないか。精一杯やってみて、残り30分
でダメそうならその時にもう一回言っ
て来い!』って言われたんで、死に物
狂いで配ったんです。そしたら、何と
かなりそうなくらい頑張って、11:30
頃に電話をくれて、何とかなりそうで
すって答えたら、『だろう?やれば出
来るんだから、その調子でガンバレ』
って言うだけで、よくやった!とか、
エラいぞ!とか、何も褒めてくれない
んです。やっぱり、ヒドいでしょ?」


と言うM君。わたしは、


「こんなコトを言うとKさんには叱ら
れちゃうかも知れないけど、M君には
言わなきゃわからないだろうから、今
日だけ伝えるよ。2度と言わないから
憶えておいて。その電話を受けた後か
ら、Kさんと俺は、いつもより懸命に
配達した。あの、11:30の電話の時、
M君が配達しているすぐ側から電話し
てたんだよ。もし、残っているような
ら手伝ってあげよう、って口にしない
だけで、行動が全部物語っていた。だ
から俺もいつもより手伝ったんだ。電
話で最後に『…ガンバレ!』って言っ
て切った後で、俺、Kさんに言ったん
だ。『ちょっと優し過ぎない?』って。
Kさんは、『全部見透かされてるみた
いでやりにくいよ!』って照れてた。
そういう人のコト、鬼ってよく言える
よなあ…」


M君は、嬉しそうな顔に変わり、それ
が満面の笑みに変わった頃、Kさんが
集荷から戻って来ました。Kさんは、


「お、M、何かいいコトがあったのか
?すごく嬉しそうな顔して…。ドライ
バーの楽しさが解って来たのか?」


そう言うと、M君は、


「はい。僕のコト、嫌いだと僕が思い
込んでた人がどうやら僕のコトを好き
だったみたいで…、嬉しくなっちゃい
ましたあ」


と答えました。Kさんは、


「仕事もまだ半人前のクセに恋愛なん
て100年早いよ!早く仕事をちゃんと
覚えろ!」


と ドヤし付けましたが、M君は、


「はい。頑張ります!」


と答えました。その後、M君はKさん
の信者になってしまったように、よく
言うコトを聞いて、一所懸命頑張って
います。


新人とベテラン。同じ状態を見ていて
も、全然違う解釈をして、自分で自分
を追い詰めてしまうコトがあると思う
んです。そんな時、第3者的な観点か
ら、客観的にその出来事を教えてあげ
られる立場というモノがあると思いま
す。そういう人と人との翻訳機になり
たいと、以前から思っていましたが、
今回は、それに近いコトが出来たよう
に思います。


歳を重ねた人間が、若い子達にしてあ
げられる1番のコトは、作り話ではな
い事実を、事実として伝えるコトでは
ないか?と思っています。


若い子は、自分中心に考えがちです。


ベテランは、仕事中心に考えがちです。


お互いの意志の疎通が出来るように、
翻訳機能を備えた大人になるコトが、
現在のわたしの役割なのかなあ…等と
考えてみたりする今日この頃です。